論文ID: JNI_020_001
外傷は,一般に,緊急度や重症度が高く,生命を危険に曝して身体機能の障害や機能の回復が困難な状況を招く.患者と家族の生活に大きな影響を与え,救命だけでなく身体機能と生活機能の回復に向けた看護介入が重要となる.本稿では,国内の原著論文・実践報告等の文献を外傷看護に係るキーワードを用いて検索を行い,論文内容を整理することで,外傷看護研究の動向と外傷看護の特徴を明らかにしている.救い得た外傷死(PTD)を可能な限り減少させ,社会復帰を目指した回復を促進するため,今後の成果が期待される研究や外傷看護の新たな視点など,研究課題や看護の方策が特徴に基づく分析により明らかになると考えられる.実際,文献を年代別,症例別に分類した結果から,外傷看護の個別性の高さが明確になった.さらに,突然発生した状況への対応や治療への意思決定の難しさが特徴として挙げられる.抽出した特徴を踏まえて分析を行い,以下の課題が明らかとなった.まず,外傷初期看護(JNTEC)学習コースとガイドラインはPTD の減少を目指すチームの指針となり,理論的な展開と教育の視点による外傷看護の普及に効果を果たしているが,外傷初期看護の指針を基にした看護判断や実践・評価に関する研究,社会生活へ復帰を目指す長期的な視点に立った看護研究の取り組みが求められる.次に,明らかにされた外傷患者の状況認知と適応のプロセスを用いた患者の看護実践の成果の検証へ活用を促す次のステップの研究へ進めることが望まれる.さらに,用語の概念分析を踏まえ,外傷看護の定義づけを行う取り組み,外傷看護の希少性から看護師の経験の中で培われている看護実践の知見の共有化と研究の蓄積,外傷患者の退院後の生活に及ぼす精神・心理的な側面の看護の探求や看護師の葛藤やジレンマなど看護体験からの問題の提示が必要である.