保健医療科学
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特集
東京電力福島第一原子力発電所事故と公衆衛生
欅田 尚樹 志村 勉寺田 宙山口 一郎
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2018 年 67 巻 1 号 p. 2-10

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抄録

日本では,2011年 3 月11日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により,地震,津波,原発事故という未曾有の複合災害を経験した。事故直後より強制的な避難が強いられ,自治体のつながりがなくなるなど非常に困難な日々が続いている現実も残されている。本特集では,これらの課題に公衆衛生の視点で幅広く議論することを試みた。

事故後は,行政機関,自治体,住民,生産者,流通業者等様々な立場の人々の努力により,1)甚大な自然災害に対する対応,および原発事故に伴う被ばく線量軽減の対応,2)中長期的な二次的な健康影響を防ぐための対応,3)放射線・放射能に対する理解,不安軽減対策等が実施されてきた。

WHO, UNSCEAR, IAEA等国際機関等からの多くの報告書が出され,放射性影響は限定的であると評価されている。原発事故は,チェルノブイリ原子力発電所事故に次ぐ,非常に大規模なものであったが,幸いにして原発サイト内の緊急作業従事者を含め,一般公衆住民の方々にも,被ばく線量は限定的な範囲にコントロールされ,被ばくによる急性放射線症候群を発症するような事例は無かった。事故後に,住民の内部被ばくを防護するために飲食品の放射性物質に関する暫定基準値が設定され広範なモニタリングも開始された。福島県では事故に伴う県民の健康の見守りと将来にわたる健康増進を目的に県民健康調査が実施されている。調査の一部である「詳細調査」で実施されている,甲状腺検査の結果や,避難等に伴う中長期的な二次的な健康影響についても課題が残されている。合わせて,国内における災害対策関係法規と災害時の各フェーズの保健医療の役割を概説する。これらも踏まえ,事故の概要を紹介し,本特集記事全体の導入を行う。

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© 2018 国立保健医療科学院
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