保健医療科学
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最新号
新型コロナウイルス感染症の教訓 -パンデミックにいかに対峙し何を学んだか-
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特集
  • パンデミックにいかに対峙し何を学んだか
    原稿種別: 巻頭言
    2022 年 71 巻 4 号 p. 279
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス
  • 正林 督章
    原稿種別: 解説
    2022 年 71 巻 4 号 p. 280-291
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    日本における最初のケースは2020年 1 月15日に発生した神奈川県の感染事例だが,その後武漢からの帰国者やダイヤモンド・プリンセス号への対応など主に水際対策を中心に対策を行ってきた.また,サーベイランスシステムの構築や積極的疫学調査のガイドラインの策定,検査体制や医療提供体制の構築のための準備などを行った.厚生労働省内には新型コロナウイルス対策本部が設置されるとともに政府全体での対応が必要なことから総理を本部長とする政府の新型コロナウイルス対策本部も設置された.さらにアドバイザリーボードや新型コロナウイルス感染症専門家会議など専門家の助言組織も設置されるなど初動対応を講じた.

    4月に入っても感染拡大は収まる気配がなく,4 月 7 日には最初の緊急事態宣言を発出し,東京や大阪など一部の都道府県において緊急事態措置を講じた.4月15日に緊急事態措置の対象を全国に拡大したが,4月11日に 1 日感染者数644人とピークを迎えた後,減少に転じ,5月25日には緊急事態宣言を解除した.後にこの感染拡大は第 1 波と呼ばれることとなった.

    その後 8 月には第 2 波,冬には第 3 波,2021年春には第 4 波,夏には第 5 波,2022年冬から春にかけて第 6 波,夏に第 7 波が到来した.この間,ウイルスは変異をとげながら世界中に広がった.

    2020年当初からワクチンや医薬品の開発にも力を入れていたが,ワクチンについては各国の争奪戦になることが予想されたため,夏の段階から海外のワクチン製造業者と協議を重ね,契約を締結した.その結果,2021年 2 月から医療従事者を対象に接種が始まり,その後,市町村において接種体制を整備しながら高齢者や基礎疾患を有する方などに接種を拡大していき,多くの国民に 2 回目,3回目,4回目と接種を進めていった.

    人口当たりの感染者数や死亡者数はこれまでのところ他の先進諸国と比較して大幅に少ない数で推移してきた.本稿では,政府の実施してきた,初動対応,組織やガバナンス,水際対策,サーベイランス,積極的疫学調査,保健所体制,検査体制,医療体制,ワクチン,医薬品,広報・リスクコミュニケーションなど様々な対応について振り返り,得られた教訓などをまとめた.

  • 白井 千香, 内田 勝彦, 清古 愛弓, 藤田 利枝, 上谷 かおり, 木村 雅芳, 武智 浩之, 豊田 誠, 中里 栄介, 永井 仁美, ...
    原稿種別: 解説
    2022 年 71 巻 4 号 p. 292-304
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    保健所は2022年 4 月時点で全国に468か所設置されており,「地域保健法(1994年)」に基づき,健康危機管理の拠点となる役割をもち,災害時や感染症対応には主体的に関わることになっている.新型コロナウイス感染症対応が始まってから,自治体はこの 2 年半,第 1 波から第 7 波の現在に至るまで,流行状況およびウイルス変異及び重症度等に応じて,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づき様々な感染症対応に模索を繰り返してきた.基本的には全国的に共通する感染症対応業務(相談,検査,発生届受理,入院調整,患者の移送,健康観察,積極的疫学調査,入院勧告や就業制限通知等)を行うが,都道府県単位で,感染症の発生状況や医療資源の違いもあり,具体的な業務内容や方法は全国一律ではなく,現実的には地域の実情により,それぞれの自治体で工夫されてきた.

    流行状況を振り返ると,第 1 波,第 2 波,第 3 波は全国的に行動制限を要請され,PCR検査の需要と医療体制の供給がミスマッチであった.新型コロナウイルスは変異以前の特徴として呼吸器機能を低下させる病原性を持ち,有効な薬剤やワクチンがまだ普及せず,診療可能な医療機関も不足していた.第 4 はα株で高齢者の施設内感染で医療提供が困難となり,第 5 波は東京オリンピックの後でδ株の変異ウイルスが主となり,首都圏での流行が目立った.第 6 波および第 7 波はο株が中心で感染性が高く,病原性は低いが感染者数の急増かつ膨大なため,保健所の能力を大きく上回る対応が求められた.全国的にどこの自治体でも保健所の負担軽減策について外部委託も含めて対応するようになった. 2 年半の間に厚生労働省からの通知も多く,全国保健所長会は要望や提言などの意見活動も行った.

    日本は自然災害の多い国であるが故に,健康危機管理として災害や感染症においては,保健所が平時から備えとしての仕組みづくりや危機発生時の対応,被害からの回復という過程において,主体となることが期待されている.新型コロナウイルス感染症対策で得た教訓を生かしパンデミックとなりうる感染症対策を地域単位で行っていくため,住民の命と健康を維持する「保健所」を,医療機関や福祉施設等と有機的に連携し,持続可能な社会の枠組みとして活かしていくことを提言する.

  • 和田 耕治
    原稿種別: 解説
    2022 年 71 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルスは,会話や咳の飛沫を介して感染が拡大する.そのため,感染拡大時に感染を抑えるために人々が接触する機会を減少するかが課題となった.本稿では,2020年から2022年の前半において,わが国において行われた感染拡大に対する公衆衛生対策として個人の感染予防策と社会全体として接触機会を減らす対策としての緊急事態宣言の実際と教訓をまとめることである.政府としては,対策全体の基本的な方針として基本的対処方針を示した.政府は,国民の共感が得られるようなメッセージを発出するとともに,状況の変化に対応した情報提供や呼びかけを行い,行動変容を進める情報提供が方針とされた.個人の感染対策としては, 3 つの密の回避やマスクの装着などを求めた.緊急事態宣言は,全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼす事態に発令され,外出自粛要請などが行われた.また,新型コロナウイルス発生後に緊急事態宣言の限界を補うため法律改正により,まん延防止等重点措置が新たに追加された.これらの社会全体に対する対策は,本来は早めに始めて,短期間で解除することが望ましい.しかし,市民や政治の納得感が得られるのはある程度病床が逼迫するといった問題が大きく認識されるようになってからということもあり,こうした措置が始められるタイミングは遅くなりがちであった.対策が遅れることで感染が拡大するということになり,それからの措置では感染がある程度落ち着く,または重症者がある程度減少して病床の逼迫が解除されるまでに数週間から数ヶ月単位となりえた.感染対策としての緊急事態宣言や接触機会の減少は,社会にも大きな影響を与えた.例えば,経済面では,GDPの減少,飲食宿泊業への影響が顕著であった.また婚姻数や出生数にも影響が及んだ.様々な政府による経済対策に公費が投入された.これらがどの程度効果的に機能したかについては経済側からの評価ならびに教訓のまとめが期待される.次のパンデミックや今後の新たな変異株の出現を見据え対策を継続して検討する必要がある.しかしながら,医療や公衆衛生だけで検討ができるわけではなく,多分野で,そして様々な関係者,特に意志決定者である政治やその実施をする政府の関与が不可欠である.

  • 貞升 健志, 吉村 和久
    原稿種別: 解説
    2022 年 71 巻 4 号 p. 314-323
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査は,全国の地方衛生研究所(地衛研)を中心に2020年 1 月末にほぼ整備された.当初は国立感染症研究所の病原体検出マニュアルに準じたコンベンショナルPCR法と塩基配列解析を組み合わせた核酸増幅検査法であったが,直ぐにリアルタイムPCR法による方法(感染研法)に変更となり,検査試薬も感染研から配布された. 3 月以降,民間検査機関での新型コロナウイルス検査が開始され,地衛研としても,民間検査機関における検査の立ち上げに協力した.その後,感染研法に変わる種々の検査試薬が厚生労働省で体外診断用医薬品として承認されるようになった.

    2020年12月には,感染力が強いSARS-CoV-2の変異株が出現した.WHOの懸念される変異株(Variants of Concern; VOC)に指定されたアルファ株等の変異株の同定や解析のために,地衛研においても,変異株スクリーニング検査やゲノム解析に関与することとなった.その後の流行は,変異株の変遷とともにあり,地衛研の業務としても,次世代シーケンサーによるゲノム解析や変異株サーベイランスが加わった.

    本稿では,地方衛生研究所での検査体制の構築から変異株に対する対応を含めて,この 3 年間の出来事を記述する.

  • 神奈川県の取り組みを中心に
    阿南 英明
    原稿種別: 解説
    2022 年 71 巻 4 号 p. 324-334
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    本邦の医療構造の特徴として,高度複雑な病態に対応できる実質的な急性期病床はOECD諸国に比して少なく,医療職の配置も相対的に少ない.また,世界で最も高齢化が進む本邦では高齢者対応や長期慢性病態への対応を重視して体制構築されてきた.強制的に医師や看護師を従事させる仕組みもなく,感染症パンデミック対応に苦慮してきた背景がある.2020年 2 月に発生したダイヤモンド・プリンセス号でのアウトブレイク対応の教訓に基づいて,重症度や医療需要から患者を分類し各々受け皿となる施設を役割分担する体制が整備された.しかし,外来機能の提供,自宅療養患者や高齢福祉施設内の患者の治療介入,COVID-19併存疾患への医療提供など,包括的な過不足ない医療提供体制が十分に構築できていなかった.感染拡大期に急激に増える入院需要に対して病床確保の課題があり,物理的な病床の確保以外に,フェーズに応じた病床拡大縮小に関する協定締結,効率的な病床運用のために,入院基準の見直しや後方受け入れ病床の確保,自宅療養者の健康観察に地域医療が参画する仕組みなどが打ち出された.しかし,徐々にウイルスの特性が判明し,ワクチンや治療法が導入された後でも,種々ある疾病の中の一部としてCOVID-19を位置づけることができず,COVID-19 診療に偏重したという弊害,高齢者施設への医療介入の困難性,臨時医療施設や入院待機ステーションなどの運営の困難性,医療情報を共有する基盤整備の遅れなどの多くの課題が表出した.

    コロナの体験から得られた教訓と将来へ向けた対策として,人々の健康維持が困難になるような「有事」に対して,即座に対応できる体制構築を行う健康危機管理の考え方を基軸に検討する必要がある.国から自治体,医療現場や保健所に至る階層化された組織体制と明確な役割や指示命令系統構築,人材育成,病床確保などの医療提供体制の在り方,さらには資機材や医薬品,ワクチンの確保などグローバルな観点で医療提供を確保する「健康安全保障体制」の構築が不可避である.今回のパンデミックで課題となった情報共有基盤整備と国民とのコミュニケーションのあり方は保健医療体制とは異なる専門性を交えた取り組みも求められている.

  • 林 修一郎
    原稿種別: 解説
    2022 年 71 巻 4 号 p. 335-345
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルス感染症の流行を受けて,これまでにないスピードで新型コロナワクチンの開発が行われ,前例のない規模で接種が進められた.

    新型コロナワクチンの接種事業は,大別すると科学,実務,政策の 3 分野にわたる様々な取り組みの集大成である.まず,科学の分野として,ワクチン開発と審査・承認や,副反応の評価などがあり,ワクチン接種が可能となるためには,有効性とともに安全性を検証・評価することが大前提であった.次に,ワクチン接種には,ワクチン確保・供給・流通から,接種体制の構築に至る,実務的な取り組みのウエイトが非常に大きい.体制の整備には長いリードタイムを要するため,先の見通しを持って準備を進めることが必要であった.これらを基礎とした上で,接種に関する政策が進められた.接種の法的枠組みの整備や接種に関する判断が行われた.更に,接種には,最終的に,国民に理解を得て接種行動をとっていただくことが不可欠であり,広報やリスクコミュニケーションを適切に行うことは極めて重要であった.

    本稿では,新型コロナワクチンの接種事業の実施に至るまでに,こうした多分野で行われた取り組みの全体像について,具体的な動きを含めて解説する.

  • 公衆衛生対応のタイムライン
    冨尾 淳
    原稿種別: 資料
    2022 年 71 巻 4 号 p. 346-356
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    2019年末に中国・武漢市での原因不明のウイルス性肺炎発生の報告以降,現在に至るまで,国際社会は新型コロナウイルス感染症のパンデミックと 2 年 9 か月(約1000日)にわたって対峙し続けている.わが国においても,繰り返す流行の波の中で発生する様々な課題に対して,非医薬的介入,緊急事態措置,保健医療体制の拡充,ワクチン接種などの公衆衛生対応を実施してきた.本稿では,公衆衛生上重要な出来事と,主に国が実施した対策に注目してタイムラインを整理した.

論文
  • JACSIS研究
    原 里紗子, 浅見 桃子, 阪野 優紀香, 野村 美帆, 大塚 達以, 内藤 拓人, 田中 琴音, 遠又 靖丈, 田淵 貴大
    原稿種別: 原著
    2022 年 71 巻 4 号 p. 357-367
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:2020年 4 月にCOVID-19に関する緊急事態宣言で,外出の自粛が要請された.感染拡大後の体重増加が懸念されているが,日本における研究報告は乏しい.本研究はCOVID-19感染拡大後の外出自粛と体重増加の関連を検討した.

    方法:横断的解析と縦断的解析を実施した.横断研究:2020年 8 月に全国の一般住民を対象に実施されたインターネット調査のデータを用いた.有効回答25,482名のうち20~64歳の18,116名を解析対象とした.外出自粛の情報は,「不要不急の外出・出張を控えたか」の自記式質問票で把握した.アウトカム変数である体重増加は,2020年 1 月以前と比べた最近 1 ヶ月での主観的な体重変化の質問に基づいて「増えた」「以前と変わらない・減った」に分類した.縦断研究:横断のデータに加えて,2019年 2 月調査,2020年 2 月調査,2021年 2 月調査のデータを突合した.4,399名が 4 時点全ての調査に参加しており,このうち外れ値を除いた4,337名を解析対象とした.アウトカム変数は,1)2020年 2 月→2021年 2 月で「>0kg」の体重変化,2)2020年 2 月→2021年 2 月で「>0kg」の体重変化かつ主観的な体重変化で「増えた」を「体重増加あり」の 2 種類を用いた.解析にはロジスティック回帰分析を用い,性,年齢,職業,入院の有無,朝食欠食,間食を調整した(なお「縦断研究」ではベースライン前 1 年間の体重変化も調整した).加えて,間食の間接効果をSobel testで検討した.

    結果:横断研究:18,116名のうち5,168名(28.5%)で体重が増えたと回答した.外出を「まったく控えなかった」を基準とした体重増加の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は「ほとんど控えなかった」で1.46 (1.16-1.83),「時々控えた」で1.87 (1.54-2.27),「いつも控えた」で2.07 (1.71-2.51)と有意に高かった(傾向性のp値<0.001).間食は,外出自粛と体重増加の関連において有意な間接効果を認めた(p<0.001).縦断研究1:外出自粛と「>0kg」の体重変化に有意な関連はみられなかった(傾向性のp値=0.401).縦断研究2:横断と同様に,外出自粛と「>0kg」の体重変化かつ「体重増加あり」で有意な関連(傾向性のp値=0.003)がみられた.また,間食の有意な間接効果(p<0.001)を認めた.

    結論:COVID-19感染拡大後の外出自粛が体重増加に影響した可能性,そして,それには間食が寄与した可能性が示された.

  • 水島 洋, 寺田 宙, 宅本 悠希, 山口 一郎
    原稿種別: 報告
    2022 年 71 巻 4 号 p. 368-372
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル オープンアクセス

    国立保健医療科学院では毎年,都道府県ならびに医薬品医療機器総合機構の薬事監視員のGMP調査実施のための研修として,「薬事衛生管理研修」を行っている.毎年 5 週間行われるこの研修では,座学による研修に加えて,製薬工場の協力を得て,模擬査察を行っているが,新型コロナ感染症の流行にともなって従来集合型で行っていたものを令和 3 年度は,座学( 3 週間)についてはオンラインにて2021年 5 月に,模擬査察については準備と現地での査察を集合( 1 週間)で,その後の報告書とりまとめと発表をオンライン( 1 週間)にて2022年 1 月に行った.その際,オンラインを用いた査察ができないか検討した.製薬会社製造所の協力のもと,3箇所の事業所で行った査察演習のうち 1 つでオンライン査察も並行して行うこととなった.

    現地に 5 名,オンラインで 7 名の参加者のもと,ハイブリッド形式での模擬査察演習を行った結果,様々な制約はあるものの,改善を加えることで効率的な査察方法としての可能性を感じた.

    今回の経験が,今後のオンライン査察の可能性につながればと考え,今回報告する.

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