目的:少子化は日本を含む先進国が直面する重大な課題である.少子化対策の一環として,柔軟な働き方を可能にし,仕事と育児の両立を促進する目的で在宅勤務が推進されている.しかしながら,在宅勤務が出生意欲の向上につながるかを調査した研究は少なく,その知見も一貫していない.また,婚姻状況によって在宅勤務の影響は異なる可能性があるが,検証されていない.本研究では,就労する日本の既婚者および未婚者を対象として,在宅勤務の頻度と出生意欲の関連を検討することを目的とした. 方法:本研究は2022年9月から同年10月に実施された日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題および社会全般に関する健康格差評価研究(JACSIS)のデータを用いた断面研究である.対象者は20歳から45歳のフルタイムで働く勤労者7,998名とした.在宅勤務は過去1か月の頻度を評価した.出生意欲は先行研究の尺度に基づき,1項目9選択肢で評価した.婚姻状況別(既婚者・未婚者)に,修正ポアソン回帰分析を用いて出生意欲の調整済みprevalence ratio(PR)とその95%信頼区間を算出した. 結果:既婚者4,587名のうち月1回以上の在宅勤務を行う人は1,385名(30.2%),出生意欲のある者は2,521名(55.0%)であり,未婚者3,411名における在宅勤務を行う人は923名(27.1%),出生意欲のある者は2,769名(81.2%)であった.婚姻状況によって在宅勤務と出生意欲の関連は異なる傾向にあった(相加的交互作用P値=0.1).既婚者では,在宅勤務をしない群と比べて週2回から3回在宅勤務をする群では出生意欲の割合が低かったものの,月2回から3回在宅勤務をする群と週6~7回の群で有意に出生意欲がある者の割合は高かった(各調整済みPR: 1.15および1.13).一方,未婚者においては,在宅勤務の頻度が多いほど出生意欲がある者の割合は低下し(傾向性P値=0.01),出生意欲のある者の割合は,在宅勤務をしない群と比べて,週6~7回の群では1割ほど有意に低かった(調整済みPR=0.87). 結論:本邦の労働者において,既婚者では在宅勤務が出生意欲を高める方向に働く一方,未婚者では在宅勤務は出生意欲を低める方向に働くことが示唆された.今後,縦断的に在宅勤務が出生意欲や出生行動に与える影響を検討していくことが求められる.
抄録全体を表示