2019 年 68 巻 4 号 p. 352-357
目的:季節性インフルエンザの流行と絶対湿度には相関関係があることが示されているが,国内におけるインフルエンザの流行に関する研究では国立感染症研究所の感染症発生動向調査などの週報が主に用いられている.また研究対象地域も県を対象とした広い地域を対象としたものが多い.本研究ではこれまでの知見を基に,市域レベルの小地域でより短期間のインフルエンザの流行の動きについて解析を試みた.特に,インフルエンザ流行期において,学級閉鎖報告日の前日,前々日の絶対湿度とその後実施された学級閉鎖の日数との比較を行い,絶対湿度とその後の学級閉鎖の相関を検討した.
方法:インフルエンザ流行期間について,日毎に集計した学級閉鎖実施日及び閉鎖学級数のデータと市内26地点に設置した温湿度計から取得した気象データを基にインフルエンザの流行と絶対湿度との関係を調べた.
結果:2010,2011,2014年度のインフルエンザ流行期間中の閉鎖学級数とその報告日前日の絶対湿度との関係を調べた結果,絶対湿度が低いほど閉鎖学級数が多くなる傾向が見られ,大規模な学級閉鎖はおよそ1.0~4.0g/kg(DA)の間で起こっていた.また,しきい値を4.2g/kg(DA)として絶対湿度と学級閉鎖日数の関係を調べたところ,2010年度は学級閉鎖報告日前日と前々日の双方で有意差が見られたものの, 2011, 2014年度についてはどちらも有意な差は認められなかった.
結論:今回検討した条件では学級閉鎖前の絶対湿度と学級閉鎖日数について,年度により関連の有無にばらつきが見られた.他の気象情報のほか,感染の影響を考慮した検討が必要となる.また,インフルエンザ流行に関する先行研究の多くは広い地域を対象としてインフルエンザの流行と絶対湿度との関係性を導いているが,その成果が小地域についてもいえることが示された.