保健医療科学
Online ISSN : 2432-0722
Print ISSN : 1347-6459
ISSN-L : 1347-6459
特集
高齢者のフレイル予防を目的とした歯科口腔保健分野の取り組み
三浦 宏子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2020 年 69 巻 4 号 p. 365-372

詳細
抄録

人口の高齢化がさらに進むなかで,高齢者の健康づくり対策に関する制度づくりが,近年活発に行われている.高齢期になっても,地域で自立した生活が遅れる高齢者が増加する社会は,WHOが2002年に提唱したActive Ageingで目指した社会と共通する.Active Ageing達成において,歯科口腔保健を含む多くの決定因子が複合的に関係する.

高齢者の健康づくり活動において,着目すべき概念として「フレイル」が挙げられる.要介護状態になるのを少しでも遅らせるためには,フレイル兆候の早期発見とその対応策を的確に導入することが求められる.口腔機能の低下を主症状とするオーラルフレイル対策も,全体のフレイル対策とのバランスのなかで考える必要がある.

近年,わが国の高齢者健康づくり対策は,いくつかの大きな施策変更が行われ,フレイル予防を軸に,前期高齢者だけでなく,後期高齢者までを包含する新しい取り組みが開始されている.これらの新たな高齢者への健康づくり対策において,歯科口腔保健対策は重要な役割を果たしている.

本稿では,高齢期の健康づくり対策に関するActive Ageingやフレイルといった必須概念の変遷を概説するとともに,わが国の近年の高齢者保健活動に関する諸施策の動向を提示する.そのうえで,それらの健康づくり施策における歯科口腔保健活動の役割と位置づけを明確にしたい.併せて,今後の高齢者歯科保健施策のあり方について考察する.

著者関連情報
© 2020 国立保健医療科学院
前の記事 次の記事
feedback
Top