2022年 6 月 7 日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」においては,「大麻に関する制度を見直し,大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を進める」との記述が含まれており,今後確実に我が国でも大麻草由来成分の医薬品利用に向けた規制整備が進んでいくとみられる状況にある.広義の医療大麻は,カンナビノイド医薬品(大麻由来医薬品),ヘンプ由来カンナビジオール(cannabidiol:CBD)製品,大麻草由来製品(狭義の医療大麻)の 3 つに大別されるが,我が国で目下検討されているのは,医療ニーズを踏まえたカンナビノイド医薬品の輸入・製造・施用を可能にすることなどである.狭義の医療大麻は,諸外国でカンナビノイド医薬品の代替などに使用されているが,精神依存などをもたらすΔ9-テトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol:THC)を含み健康影響も大きいため,依存・乱用のおそれの低いCBDとは区別して議論されるべきである.
近年の我が国における大麻乱用の背景には,大麻の有害性・危険性を軽視している若年者が多いことが指摘されており,カンナビノイド医薬品やCBD製品の普及にあたっては,「大麻を使用してよい」という大麻乱用に繋がるような誤った認識が広がらないよう留意する必要がある.保健医療の現場や地域における専門家である保健医療従事者も,大麻の健康影響を否定したり,有用性のみを強調する言説を肯定・拡散したりしてしまうことのないよう努めるべきであるが,大麻草由来成分に関しては2018年頃から大きく情勢の変化が生じており,大半の者は教育課程などにおいて適切なインプットの機会を得られていない.そのため保健医療従事者が情勢認識をアップデートすることのできる機会や教育・啓発コンテンツなどの充実などが必要であると考えられた.