2023 年 72 巻 5 号 p. 387-394
各保険者で3年毎に策定される地域包括ケア計画(介護保険事業計画)は,保険者が地域の実情に沿った地域包括ケアシステムを構築する上での基本計画である.しかし,多くの自治体における計画は,個別事業が厚生労働省の基本指針に則って列挙されてはいるが,最終的な目標の記述も抽象的であり,各事業がどのように連動してゴールに向かっていくのかについて,十分に説明できていない.
本稿は,今後保険者が保険者機能を高めつつ,地域包括ケアシステムの構築を着実に推進していく上での手法と課題を,「地域デザイン」の考え方に基づいて整理した.
地域デザインは,長期的に目標とする地域の到達イメージを設定しながら,バックキャスティングの手法によって,現段階において必要となる取組を組み合わせ設計していく手法である.
保険者が目指すゴールイメージについては,「住み慣れた地域での生活の継続」と「自立した日常生活/自分らしい生活」と規定している.またその実現のためには,受給者の生活環境が頻繁に変化する状態の抑止が不可欠としている.この状態の実現を「人がケアにあわせる仕組み」から「人にケアをあわせる仕組み」への転換と位置づけている.
また本稿では,ケアの提供体制の転換によるアウトカム評価を数値化する手法として「在宅生活改善調査」などいくつかの調査・分析ツールが提供されていることを紹介している.
また地域包括ケアシステムの目標を達成するために実施される地域支援事業が,「多職種連携・医療介護連携」と「地域づくり」の2系統に分類できること,それぞれの取組原理が異なることなどを,「地域包括ケアの植木鉢」を参照しながら解説している.最後に,保険者が地域デザイン機能を発揮する上で必要になる条件と,今後の課題について言及している.