抄録
形態素解析や構文解析など自然言語処理の要素技術は成熟しつつあり,意味解析・談話解析といった,より高次な言語処理の研究が盛んになってきた.特に文の意味理解のためには「誰が」「何を」「誰に」といった要素(項)を同定することが重要である.動詞や形容詞を対象にした項構造解析のことを述語項構造解析と呼ぶが,文中の事態を表す表現は動詞や形容詞の他にも名詞も存在することが知られている.そこで,我々は日本語の名詞を対象とした項構造解析タスクを取り上げ,機械学習を用いた自動的な解析手法を提案する.日本語の事態性名詞には事態を指すか否か曖昧性のある名詞があるため,まず事態性の有無を判定する事態性判別タスクと項同定タスクの 2 つに分解し,それぞれ大規模なコーパスから抽出した語彙統語パターンを用いた手法と述語・事態性名詞間の項の共有現象に着目した手法を提案する.