抄録
ロボットと人間の双方でより円滑なコミュニケーションを行うためには,ロボットにも人間のような会話能力が求められると考える.人間の会話はあいさつや質問応答,提案,雑談など多岐に渡るが,ロボットがこういった会話,例えば何かしらの情報を持った雑談のように能動的な会話を行うには,新聞記事のようなリソース中の表現を会話テンプレートに埋め込むという方法が考えられる.しかし新聞記事中の語と会話に用いられる語の馴染み深さには違いがある.例えば新聞記事中の「貸与する」という語は,会話に用いる場合には「貸す」という表現の方が自然である.つまり,人間にとって違和感のない会話のためのリソースとして新聞記事を用いるには,難解語を平易な表現へ変換する必要があると考える.そこで本稿ではロボットと人間との自然な会話生成を担う技術の一端として,新聞記事中の難解な語を会話表現に見あった平易な表現へと変換する手法を提案する.提案手法では人間が語の変換を行う際の処理になぞらえ,1 つの語を別の1語で変換する 1 語変換および文章で変換する N 語変換を組み合わせることでより人間にとって自然に感じる変換を行い,その有効性を示した.結果として変換すべき難解語を 75.7% の精度で平易な表現に,81.1% の精度で正しい意味を保持した表現に変換することが出来た.