推薦システムのユーザ体験を高めるために重要な指標の 1 つが多様性 (Diversity) である.多様性は推薦システムが提示するリスト内には様々なコンテンツが含まれるべきという考え方であり,過去の研究では多様性が含まれるリストの方がユーザに好まれるとされている.しかし実際のサービス上で推薦システムを検証したという報告は少なく,サービス上で多様性がユーザにどのような影響を与えるのかは明らかになっていない.本研究では実際にサービスとして提供されているウェブページ推薦システムを分析し,その推薦システムに多様性を導入して比較を行った事例について報告する.まず多様性が導入されていない推薦システムのユーザ行動を分析し,結果としてリストの中位以降に表示するウェブページに課題があることを明らかにした.その上で多様性を導入し,多様性のない既存システムとサービス上でのユーザ行動を比較した.結果として継続率やサービス利用日数が有意に改善していることを示し,従来研究で示されていた多様性を含む推薦リストの方がユーザに好まれるということを実サービス上で示した.そして利用日数が増えるに従ってリスト全体のクリック数が改善していくこと,特にリスト下部のクリック率が多様性のない手法では下がっていくのに対して,多様性のある手法では向上していくことを示した.