2017 年 24 巻 3 号 p. 351-369
元来から日本は外来語を受け入れやすい環境にあるといわれており,外来語が益々増加する中,特に,英語の場合,外国語の表記を利用するシーンも増えている.また,英単語など頭文字をつなげて表記する略語も利用されている.しかし,英字略語は別のことを表現しても,表記が同じになる多義性の問題を持っている.そこで,本稿では,英字略語の意味を推定する方法を提案する.提案手法では,英字略語の意味推定を未知語の意味推定とみなし,ある概念から様々な概念を連想する語彙の概念化処理を可能とする概念ベースと,概念化した語彙の意味的な近さを判断できる関連度計算または Earth Mover’s Distance を用いる.さらに,英字略語ゆえの情報の欠如を,世界で最も収録語数が多いとされている Wikipedia を使用することで補完する.これらを用いることで,英字略語の多義性を解消し,英字略語の本来の意味を推定する.提案手法は,129 件の新聞記事に対して,最高で 80% 近い正答率を示したことに加え,比較方法より良好な結果を得ることができた.