2018 年 25 巻 5 号 p. 555-576
文法誤り訂正の研究開発では,訂正システムの性能を自動評価することは重要であると考えられている.従来の自動評価手法では参照文が必要であるが,参照文は人手で作成しなければならないため,コストが高く網羅性に限界がある.この問題に対処するために,参照文を用いず,文法性の観点によって訂正を評価する参照無し手法が提案されたが,従来の参照有り手法の性能を上回ることはできなかった.そこで本研究では,先行研究で提案された手法を拡張し,参照無し手法の可能性について調査する.具体的には,文法性に加えて流暢性と意味保存性を組み合わせた参照無し手法が,従来の参照有り手法よりも人手評価スコアを正確に予測できることを実験的に示す.また,参照無し手法は文単位でも適切な評価が可能であることと,文法誤り訂正システムに応用可能であることを示す.