2018 年 25 巻 5 号 p. 527-554
日本語は冠詞のない言語である.日本語名詞句の情報の状態は,テキストに陽に表出せず,限られた文脈情報や世界知識のみに基づく手法では推定することは難しい.情報の状態は情報の新旧や定・不定などの観点で分析される.しかしながら,日本語の言語処理においては,この概念が適切に扱われていない.そこで,本稿では,まず,日本語名詞句の情報状態について解説する.次に,読み時間を手がかりとして,名詞句の情報の状態(新旧・定不定)を推定することを検討する.具体的には日本語名詞句の情報の状態が文の読み時間にどう影響するかについて調査する.結果,名詞句の読み手の側の情報状態(情報)が読み時間に対して影響を与えることを明らかにしたので報告する.