本研究では,返信を伴う会話形式のテキストを対象とした,教師なし抽出型ニューラル要約モデル Implicit Quote Extractor (IQE) を提案する.引用は投稿やメールに返信する際,言及している箇所を強調するために使われる.高頻度に引用される箇所は重要であるとの仮説の元,我々は引用を要約として抽出するモデルを提案する.ほとんどの返信は明示的な引用を含まない.そのため,引用を直接要約モデルの教師データとして使うことは難しい.しかしながら,明示されていなかったとしても,返信は返信元の文章のある箇所に必ず言及している.返信が投稿のどの箇所に言及しているかは,返信内容から推測できるため,明示的な引用を用いずに,返信のみから本来引用されるべき箇所を推定することが可能である.この箇所を暗黙的引用 (Implicit quote) と呼ぶ.提案モデルであるIQEは,返信を用いて暗黙的引用を推定する機構を備える.IQE の学習タスクは,あるテキスト(返信候補)が,ある投稿に対する実際の返信になっているかを判定することである.IQE は,数文を投稿から抽出し,それを返信候補の真偽判定の特徴量とする.IQE は返信候補の真偽判定の性能を向上させるように文抽出のパラメータを学習するため,返信が言及しやすい文を要約として抽出するようになる.我々は本モデルを 2 つのメールデータセットと 1 つのソーシャルメディアデータセットで評価し,本モデルが要約タスクに有用であることを示す.更に,提案モデルが引用を抽出できる点,また,提案モデルが従来モデルが抽出できない重要文を抽出可能であるという点を実験によって検証し,それを支持する結果を得た.