日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-5
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シンポジウム13 オルガネラトキシコロジー
親電子性ヌクレオチドによる細胞内レドックス調節機構とその制御
*澤 智裕
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抄録
活性酸素はこれまで、生体分子の酸化修飾を介した酸化ストレスの病態因子と捉えられてきた。一方、近年になり、活性酸素が細胞内でシグナル分子として機能し、細胞の分化、増殖、代謝機能など多彩な生命機能の制御に関わることが明らかになり、その生理機能や疾患との関連が注目されている。活性酸素のシグナル伝達に関連してレドックスセンサー蛋白質と呼ばれる、活性分子種に反応性が高い蛋白質が同定された。これらレドックスセンサー蛋白質は、分子内のシステイン残基が活性酸素と反応することで、蛋白質の構造や機能(例えば触媒活性など)が変化し、それがシグナルとなって伝達されることが明らかになってきた。我々は、NOの2次メッセンジャーであるcGMPが、活性酸素とNOの作用によりニトロ化を受け、新規2次メッセンジャーである8-nitroguanosine 3',5'-cyclic monophosphate(8-nitro-cGMP)が生成することが明らかにした。さらに、8-Nitro-cGMPはその親電子性によってレドックスセンサー蛋白質のシステイン残基と反応して、ユニークな蛋白質翻訳後修飾であるcGMP付加体形成(蛋白質S-グアニル化)を介してセンサー蛋白質を活性化することが分かった。本講演では、血管弛緩応答をはじめ多彩な生理機能に関わるcGMP依存性プロテインキナーゼの蛋白質S-グアニル化を介した機能制御に関する知見を中心として、親電子性ヌクレオチドによる細胞内レドックス調節機構を紹介する。
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© 2016 日本毒性学会
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