2021 年 28 巻 4 号 p. 1034-1052
話し言葉の機械翻訳では,話し言葉に特有の現象が翻訳精度に悪影響を及ぼすことが知られている.本研究では大学講義翻訳システムにおける日英翻訳の前処理として,日本語の話し言葉から書き言葉への自動変換を行うことにより翻訳精度を向上させる.まず大学講義の書き起こしとそれを書き言葉に変換したもの,対応する英文の 3 つ組からなるコーパスを構築した.次にそれを用いて話し言葉書き言葉変換モデルと日英翻訳モデルを学習させた.その結果,話し言葉書き言葉変換が日英翻訳の精度を向上させることを示した.また,話し言葉に特有の現象の分類に基づき,どのような現象が翻訳精度にどの程度影響するのかを定量化した.