2023 年 30 巻 3 号 p. 883-906
未来学分野におけるホライゾン・スキャニング (Sardar 2010) の自動化を目指し,文書探索およびコメント生成問題とデータセットを提案する.ホライゾン・スキャニングは未来に起こりうる社会変化を分析する枠組みで,1) 新聞記事等を大量に収集し,2) 重要な記事には主観的な意見や記事の要約をコメントとして記述する. 収集された記事とコメントは社会変化についてのシナリオ記述に活用される.本研究ではデータセットの分析,探索およびコメント生成モデルの構築,評価を行うことで,問題の特徴を明らかにする.データセットの分析より,1) 探索すべき記事は特徴語および意味的な距離の観点から一般的な記事と異なること,2) コメントは談話構造の観点から類型に分類できることがわかった.また,学習した探索モデルは適合率 @100 において 70% の性能を示した.さらに,探索モデルの出力記事は専門家による採点,および実際のシナリオ記述作業の中で用いることで評価され,実利用に耐えうる品質であることを確認した.一方,コメント生成問題は主観的なテキスト部分の生成が特に挑戦的で,生成技術のさらなる高度化が必要であることがわかった.