2023 年 30 巻 3 号 p. 907-934
共通基盤を構築可能な対話システムを実現するためには,対話において共通基盤が構築される過程を明らかにすることが重要である.しかしながら,既存研究では対話の結果得られる最終的な成果物のみを共通基盤と関連付けて分析しており,共通基盤が構築される過程は明らかにされていない.本研究では,共同作業を行う対話において,共通基盤構築の過程を明らかにすることを目指し,データ収集手法を提案する.具体的には,課題の中間結果をその時点における共通基盤に相当するものとして,自動的に記録するデータ収集手法を提案する.提案手法を用いて 984 対話を収集し,共通基盤構築の過程を定量的に調査した結果,共通基盤の構築過程にいくつかのパタンが見られた.また,共感や同意,ポジティブな表現を通じて自身の理解を伝える発話が出現している場合,共通基盤が構築されている傾向にあると考えられる.さらに,対話中の共通基盤構築の度合いを対話や課題の内容から推定する実験を行い,双方の内容が推定に有用なことを示した.