大規模言語モデル (LLM) の発展により,自然言語処理に求められるリソースが変わりつつある.こうした傾向は医療言語処理においても同様で,LLM や計算機が使うことを前提としたリソースの開発が期待される.そこで,我々は日本語大規模医療用語辞書 JMED-DICT を構築した.本辞書は,LLM や計算機を通じて医療業務に利用されることを想定しており,医療用語間の対応関係を保持することに重点を置く.データの構成としては,医療用語を病名,医薬品,部位,検査の 4 つのサブデータに分けて構築した.各サブデータ中には見出し語として医療テキストから抽出した医療用語が含まれ,語自体についての属性情報と,各種医学概念リソースの分類とのリンク情報が収録される.本辞書の構築およびメンテナンスでは,人手による作業と自然言語処理の技術を組み合わせ,大規模なデータの質を保ちつつ省コストで運用することを目指した.さらに,本辞書のデータを利用するための Web API を開発することにより,迅速な応用を可能とした.本論文は,リソース構築の報告だけでなく,リソース構築のノウハウを蓄積・継承することも目的としており,構築中に生じた作業プロセスや作業者による議論を反映した詳細な作業基準を付録に付した.