自然言語処理
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Lexical Functional Grammarに基づく実用的な日本語解析システムの構築
増市 博大熊 智子
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2003 年 10 巻 2 号 p. 79-109

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抄録
本稿では, Lexical Functional Grammar (LFG) に基づいた実用的な日本語文解析システム構築に向けての日本語LFG文法記述の詳細とシステムの評価について述べる. 本稿で述べる日本語LFG文法は, (1) 解析対象が口語的・非文法的文であっても解析可能な高いカバー率を持つ, (2) 言語学的に精緻な文法規則を持ち豊富な意味情報を含むf-structureを出力可能とする, (3) f-structureの持つ言語普遍性の特徴を活かすため他言語のLFG文法と高い整合性・無矛盾性を保つ, の3点を特徴とする. 自然言語の文法記述を完全に体系的・手続き的に進めることは困難であり, 本稿で述べる文法記述においても経験的なものに依存する面は大きい. しかしながら, OTマークを利用して段階的に解析を行う手法によって, 例外的な文法・語彙規則が解析結果に及ぼす悪影響を減じ, 文法の大規模化に伴う記述の見通しの悪さを軽減することが可能となった. さらに, 部分解析機能の導入によって, 口語的・非文法的文への対処が可能となった. マニュアル文のような文法に則った文と, お客様相談センター文のような口語的な文の両者を対象に解析実験を行い, 日本語LFGに基づくシステムとしてはこれまでにない, 95%以上の解析カバー率が得られていることを確認した. また, マニュアル文を対象に解析精度測定のための評価実験を行い, 係り受けの再現率・適合率共に平均値で約84%, 上限値で約92%の値が得られていることが確認できた.
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