2005 年 12 巻 3 号 p. 183-201
本論文では, 機械翻訳を介したコミュニケーションにおける利用者の機械翻訳システムへの適応状況を分析し, 機械翻訳を介した異言語間コミュニケーション支援の方向性について論ずる.コミュニケーションの目的が明確で, 利用者の機械翻訳への適応が期待できる状況において, 多言語機械翻訳を介したコミュニケーションを行う時, 利用者はどのような適応を行うのか, また, その適応の効果はどの程度のものなのかを明らかにした.適応のための書き換えの方法は翻訳言語ペアに強く依存することが分かった.日本語から英語への翻訳の場合, 日本語と英語の概念問の食い違いを補うための語句の置き換えや言語表現習慣の違いを補う主語の補完などが多く観察された.また, 日本語や韓国語のように類似の言語では, それらの言語における適応の傾向が似ていることが分かった.日本語から英語への翻訳のための適応は, 英訳自体には効果が大きいが, 韓国語訳にはほとんど効果がなく, 中国語訳への効果もそれほど大きくはないことが分かった.