自然言語処理
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ゲーム理論による中心化理論の解体と実言語データに基づく検証
白松 俊宮田 高志奥乃 博橋田 浩一
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2005 年 12 巻 3 号 p. 91-109

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抄録
中心化理論 (centering theory) は, 注意の中心, 照応, 結束性の問の相互作用を説明する談話構造の理論である.しかし, 照応現象の背後にあるはずの基本原理を明らかにするものではない.また, 中心化理論で重要な役割を担う顕現性 (salience) が, 客観的に計量可能な尺度として定式化されていないという問題もある.一方, Hasidaら (1995, 1996) は, ゲ1ム理論に基づく意図的コミュニケーションのモデルとして意味ゲーム (meaning game) を提唱し, 「照応等の現象はゲーム理論で説明できる」と主張しているが, この主張は実言語データに基づいて検証されていない.中心化理論の2つのルールに対応する意味ゲームに基づく選好を日本語のコーパスを用いて検証した.その結果, 中心化理論の予測を越える部分も含めてこれらの選好が成立することがわかった.したがって, 基本原理の明確さおよび予測能力の強さゆえに, 中心化理論よりも意味ゲームの方が優れた作業仮説であり, この意味において, 中心化理論等の照応や焦点に特化した理論は不要と考えられる.
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