自然言語処理
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論文間の参照情報を考慮したサーベイ論文作成支援システムの開発
難波 英嗣奥村 学
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1999 年 6 巻 5 号 p. 43-62

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抄録
本稿では, データベースから関連する論文を自動的に収集し, 人間が特定分野のサーベイ論文作成する作業を支援するシステムを示す. 本研究では, サーベイ論文作成支援の際, 論文の参照情報に着目する. 論文の参照情報とは, 論文中でその論文と参照先論文との関係について記述されている箇所 (参照箇所) から得られる情報のことで, 参照先論文の重要点や, 参照元と参照先論文問の相違点を明示する有用な情報が得られる. サーベイ論文作成には2つの処理 (1) 特定分野の論文の収集 (2) 論文問の相違点の検出が必要であると考えられる. 本研究では参照情報を利用することでこれらの処理が部分的に実現可能であることを示す. 具体的には, ある論文が他の論文を参照する時の参照の目的を, cue wordを用いて解析し, 論文の参照・被参照関係にリンク属性 (参照タイプ) を付与する. 結果として, 参照箇所抽出ではRecall 79.6%, Precision 76.3%の精度が得られた. また, 参照タイプ決定では83%の精度が得られた. これらの参照タイプを利用し, ある特定分野の論文を自動的に収集するのに近い処理が可能になった. また, ユーザに論文間の参照関係を表すグラフ, グラフ中の個々の論文のアブストラクト, 論文問の相違点の記述された参照箇所を提示するシステムを構築した. このシステムを利用することで特定分野の論文が自動収集され, また収集された論文集合の論文間の相違点が明らかにされるため, 参照情報がサーベイ論文作成の支援に有用であることが示された.
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