抄録
著者らは用例提示型の日英翻訳支援システムを開発している. この中には利用者が入力する日本語の表現に類似する表現を検索して, 検索結果を含んだ日本語文とその対訳を表示する機能がある. 著者らの日本語データベースの文は平均長が88.9文字と長い. このように長い用例を対象に類似検索を行う場合, キーワードによるAND検索は適切ではない. なぜなら用例が長いため1文中に同一キーワードが複数回出現する場合があり, これが原因で不適切な用例を検索しやすくなるからである. これに対して著者らは入力キーワードの語順とその出現位置の間隔を考慮した検索手法を提案する. これによって構文解析を行うことなく構文情報を反映した検索を行うことができる. 本稿では従来のAND検索と提案手法を使った評定者による主観評価実験を報告する. この中で, 提案手法の有効性が統計的に有意となったことを示す. また, 検索時間の増加は1.3倍であった.