抄録
本稿では, 音声対話システムがシステム知識として保有するデータベースの内容に依存して, できるだけ短い対話でユーザの必要とする情報を伝達するためのデュアルコスト法と呼ぶ対話制御法を提案する. 音声対話システムは, 音声認識誤りのために, ユーザ要求内容を確定することを目的とした「確認対話」を実施する必要がある. 長い確認対話は対話の円滑な流れを阻害するので, 確認対話は簡潔であることが望ましい. ユーザは対話時点でのシステム知識の内容を知らないので, システムが詳しい情報を保有していない事柄に関して詳細な情報を要求する場合が頻繁に起きる. そのような場合にも, 従来法ではユーザ発話内容を逐一確認するので, 無駄な確認が増えてしまうという問題があった. この問題を解決するために, 確認コストと情報伝達コストと呼ぶ2種類のコストを導入する. 確認コストは確認対話の長さであり, 音声認識率に依存する. 情報伝達コストは, 確認対話でユーザ要求を確定した後, ユーザに情報を伝達する際のシステム応答の長さであり, システム知識の内容に依存する. デュアルコスト法は, この2つのコストの和を最小化することにより対話を制御する方法であり, 従来法が避けることができない無駄な確認対話を回避しながら, 短い対話でユーザ要求に応じた情報を伝達することができる.