日英機械翻訳において, 翻訳が難しいと見られる抽象名詞, 「の」, 「こと」, 「もの」・「ところ」, 「とき」, 「わけ」の6種類を対象に, 文法的用法と意味的用法を分類し, 英語表現との対応関係を検討した.具体的には, 名詞「の」は, 意味的に他の抽象名詞に置き換えられる場合 (交替現象) の多いことに着目して, 置き換え先となる抽象名詞の種類と置き換え可能となる条件について検討した.次に, 置き換え後の5種類の抽象名詞の用法を「語彙的意味の用法」, 「文法的意味の用法」に分け, このうち, 「文法的意味の用法」を, さらに, 「補助動詞的用法」と「非補助動詞的用法」に分類した.さらに, これらの分類を詳細化し, 英語表現との対応関係を「日英対応表」にまとめた.交替現象の解析精度と「日英対応表」の精度を調べるため, 新聞記事から抽出した抽象名詞の用例に適用した結果では, 「の」の交替現象の解析精度は, 97%, 「日英対応表」の平均カバー率は89%, 平均正解率は73%であった.
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