2002 年 9 巻 3 号 p. 87-108
本研究では, 要約文とその要約文を作成するために使用された表現を含む原文とを自動的に対応付ける手法を用いて, 人間が要約文を作成する上で, 要約元となった原文をどのように再構成するかを調査した. 対応付けに用いた手法は, かかり受け構造の解析結果を利用し, 要約文とその対応文との間の対応付けを文節単位で行う. また, 要約文1文に対して, 要約元文章中の複数文を対応付けすることを許して対応付けが可能である. 調査した対象は, 複数の作業者が新聞の社説を要約したデータである. このデータに対して, 対応付け手法を実際に適用した. 対応付けの結果, 要約元文章で用いられていなかったり, 元文章でかかり受け関係がなかった表現が要約文に用いられていた場合に, それらの表現を構成する文節は未対応となる. そこで, そのような要約文中で未対応になった文節がどのように生成されたかを, 計算機でも処理可能な操作を主眼に分類・整理して考察した. その結果, 要約原文のかかり受け構造は, 要約文においても保存されることが多く, 要約文に新しく出現する表現の多くは, 複数の原文から1つの要約文を作成する文結合操作と, 単文節を中心とした言い換え操作により生成されることがわかった.