目的:乳幼児虐待予防に向けて市町村保健師が支援の必要な「気になる親子」を判断するためのアセスメントの視点を明らかにし,母子保健活動への示唆を得る.
方法:A県内の自治体に所属している経験9年以上かつ母子保健の経験5年以上の市町村保健師10人を対象に,インタビューガイドを用いた半構造化面接を行った.Berelson B.の内容分析を参考にデータを質的帰納的に分析した.
結果:アセスメントの視点として18カテゴリーが形成され,アセスメントした対象により母親・父親・子どもの3つの視点に分類できた.母親に対しては【他者への関わりで不器用さやあいまいさ・乱暴な態度をみせる】など12カテゴリー,父親に対しては【家事や育児へ非協力的な行動をとる】など2カテゴリー,子どもに対しては【他者とのやりとりの難しさやほかの子とは違う距離感がある】など4カテゴリーであった.Scott WAの式による3人の一致率は88.6%以上であり,カテゴリーの信頼性を確認できた.
考察:市町村保健師はアセスメントの視点を,母親に対しては母親の発言や子どもへの関わり,暮らしぶりなどの観察から把握し,父親に対しては母親の発言から父親の様子を推測して把握し,子どもに対しては母親の発言や子どもの観察から把握していた.またアセスメントの視点は市町村保健師が,親子との関わりで把握し支援につなげた経験を通してつくりあげた自身に内在する基準となるもので,それに照らし直感的に判断していると考えられた.