抄録
余ハ「コンゴーロート」ノ血液凝固促進作用ト綱状織内被細胞系統殊ニ肝臟及ビ脾臟トノ關係ヲ窺ハントシ,先ヅ對照實驗トシテ脾臟剔出犬ノ脾臟剔出後5時間迄,脾臟及ビ肝臟全剔出犬ノ死亡ニ至ル迄ノ血液凝固時間竝ニ凝固要素ヲ測定シ,次イデ1%「コンゴーロート」溶液對瓩0.2ccヲ正常犬,對照開腹術施行犬,肝臟全剔出犬,脾臟剔出犬,脾臟及ビ肝臟全剔出犬ニ靜脈注射シ,其ノ血液凝固時間及ビ凝固要素ヲ測定シ次ノ如キ成績ヲ得タリ。
(1) 正常犬ニ「コンゴーロート」注射ヲ施行スル時ハ注射後30分ヨリ既ニ著明ナル血液凝固時間促進ヲ示シ,其ノ促進ハ注射後2時間ニテ最高ニ達シ,其ノ効果ハ大略5時間繼續セリ。然シテ凝固時間促進時ニハ著明ナルFibrinogenノ増加ヲ認メタリ。
(2) 對照開腹術施行犬ニ於テ手術的影響アリト認メラルル時間ニ於テ「コンゴーロート」注射ヲ施行スル時モ,正常犬ノ「コンゴーロート」注射ノ場合ト殆ンド大差ナク血液凝固時間促進ヲ來セリ。
(3) 肝臟剔出犬ニ於テ「コンゴーロート」注射ヲ施行スル時ハ,輕度ノ凝固時間促進ヲ招來スレド,Fibrinogen量ノ増加ハ認メラレズ。
(4) 脾臟剔出犬ニ於テ脾臟剔出後5時間迄ノ血液凝固時間ノ變動ハ一定ノ規律ヲ有セザルモ,Fibrinogen及ビAntithrombinハ稍明瞭ナル減少ヲ示セリ。亦脾臓剔出犬ニ「コンゴーロート」注射ヲ施行スル時ハ血液凝固時間ノ促進ヲ來シ,Fibrinogen増加ヲ認ムレドモ,正常犬ノ場合ニ比シテ稍劣ル。
(5) 脾臟及ビ肝臟全剔出犬ハ肝臟全剔出犬ニ比シテ一般ニ手術後ノ生存時間短カク,其ノ血液凝固時間ノ遲延,Fibrinogenノ減少及ビAntithrombinノ増加等ハ後者ニ比シテ尚早期ヨリ認メラルルモ,其ノ凝固時間遲延度,Fibrinogen減少度,Antithrombin増加度ハ兩者ニ大ナル差異ナシ。亦此ノ脾臟及ビ肝臟全剔出犬ニ「コンゴーロート」注射ヲ施行スル時ハ,血液凝固時間促進及ビFibrinogen増加ヲ招來セズ。
以上ノ成績ヨリシテ次ノ如キ結論ヲ得タリ。
(1) 「コンゴーロート」溶液ノ靜脈内注射ハ肝臟及ビ脾臟ヲ刺戟シテ,Fibrinogenヲ血中ニ増加セシメ血液凝固時間ヲ促進セシム。之ハ「コンゴーロート」注射ガ綱状織内被細胞系統ヲ刺戟シ其ノ機能ヲ亢進セシムルニ因ルモノナラン。
(2) 「コンゴーロート」注射ノ血液凝固促進ニ及ボス効果ハ,正常犬,脾臟剔出犬,肝臟全剔出犬ノ順位ニシテ,脾臟及ビ肝臟全剔出犬ニ至リテハ全ク効果ナキモノト認ム。
(3) Fibrinogenノ主要生成臟器ハ肝臟及ビ脾臟ニシテ,兩者ノ中肝臟ハFibrinogenノ大部分ノ生成ニ,脾臟ハ其ノ一部生成ニ與ルモノト認メラル。
(4) 脾臟ハAntithrombinノ生成ニ關與ス。
