抄録
スパース性(多くの成分がゼロであること)によって特徴づけられる高次元の信号を少ない数の観測データから復元する枠組みは,しばしば,圧縮センシング(compressed (compressive) sensing)と呼ばれる.近年,信号処理の文脈で盛んに研究されているが,その数理の本質は“スパース性”という事前知識を利用したベイズ推論にある,と捉えることもできる.このことは圧縮センシングが同様にベイズの公式を用いて定式化できる通信理論,学習理論の諸問題とも浅からぬ関係があることを意味している.本稿では,最近著者らが行った統計力学の方法に基づいた圧縮センシングに関する性能評価の概要を紹介するとともに,そうした圧縮センシングの数理に関する“横のつながり”について述べる.