日本神経回路学会誌
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解説
エンコーディングモデルを用いた視覚情報処理研究:情報表現,予測,デコーディング
西本 伸志
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2012 年 19 巻 1 号 p. 39-49

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抄録
神経科学のゴールの一つは,私たちの日常の体験を支える脳·神経系の情報処理メカニズムを理解することにある.しかし,脳·神経の視覚情報処理に関する多くの知見は,特定の仮説検証を行うために特化した限定的な視覚刺激を用いた実験結果に基づいており,より自然な視覚入力に対して容易に一般化できない.自然な視覚入力下における視覚情報処理の包括的な理解を目指す枠組みとして,近年エンコーディングモデルを用いたアプローチが注目を集めている.このアプローチでは,視覚情報処理に関する仮説は任意の刺激に対する応答を予測する定量的モデルとして実装され,その妥当性は新規刺激に対する予測性能によって検証される.エンコーディングモデルを用いたアプローチは汎用的なものであり,その適用例は初期視覚領野における視覚特徴表現から高次視覚領野における意味情報表現まで,受動的知覚条件下から能動的認知タスク条件下まで,また単一細胞電位記録から機能的磁気共鳴画像(fMRI)記録まで,多岐に渡る.本解説では,エンコーディングモデルを用いた研究の枠組み,および同モデルを利用した最近の研究を紹介する.
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© 2012 日本神経回路学会
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