2020 年 10 巻 1 号 p. 58-65
歯科診療時に発生する音や匂いなどが,患者の不安を助長する要因となっている.そこで,歯科診療への応用に向けたアロマテラピーの研究として,真正ラベンダー精油の香りによるストレス緩和効果を検討した.女性16名を対象とし,真正ラベンダー精油の香りを嗅ぐ群(ラベンダー群)と無香の群(コントロール群)に分けた.ラベンダー群は,10分間の前半安静(前半安静)開始から10分間の後半安静(後半安静)後まで1,000倍希釈した真正ラベンダー精油の芳香浴下で行った.超音波スケーラーによる2分間のポケット洗浄をストレス負荷とし,調査前・前半安静後・ストレス負荷直後・後半安静後に唾液アミラーゼ活性,血圧,脈拍数などの生理的反応を測定した.調査前後における対象者の気分・感情をPOMS2日本語短縮版(POMS2)で測定した.ラベンダー群は,真正ラベンダー精油の香りに関する質問紙調査を行った.
ラベンダー群の生理的反応が有意に低下し,POMS2 の「怒り-敵意(AH)」,「疲労-無気力(FI)」,「緊張-不安(TA)」の3項目で,有意に得点が減少した(p < 0.05).ラベンダー群全員が真正ラベンダー精油の香りを肯定的にとらえていた.
真正ラベンダー精油の芳香成分と香りの嗜好性によって,対象者のストレスが緩和されたと考えられる.歯科診療において,真正ラベンダー精油の芳香浴を行うことは,患者のストレス緩和として有用ではないかと考えられた.