2021 年 11 巻 1 号 p. 75-79
矯正装置のレジン床部は,矯正用常温重合レジンを用いて製作するが,装置の種類や症例,術者の判断によりレジン床部の厚さや加圧重合時間を変えることがある.
本研究の目的は,矯正用常温重合レジンの床部の厚さと築盛後の加圧重合時間が機械的強度に与える影響を明らかにすることである.
実験条件は,床部の厚さを,1.5 mm,3.0 mm,4.5 mm および9.0 mmの4条件,加圧重合時間を7.5分,15分および30分の3条件とし,この条件で矯正用常温重合レジンを用いて試験片を製作後,1週間水中で浸漬保管し,三点曲げ試験を行った.
三点曲げ試験により得られた曲げ強さは,試験片の厚さが1.5 mm,3.0 mmでは,加圧重合時間 7.5分>15分>30分,4.5 mmでは,15分>30分>7.5分,9.0 mmでは,30分>7.5分>15分の順に,それぞれ大きい傾向を示した.しかし,すべての各条件間において,統計学的に有意差は認められなかった.この結果から,レジン床部の厚さに応じて,重合初期段階での加圧重合時間を任意に変えても,装置装着までの期間として1週間あれば,口腔内装着時のレジン床部の曲げ強さに影響しないと考えられる.
矯正用レジンの厚さと加圧重合時間を変え,曲げ強さを検討した結果,床部の厚さとレジン築盛後の加圧重合時間を変えても,レジン築盛から口腔内装着までの期間,1週間保管した場合,曲げ強さに影響は認められなかった.