本研究の目的は,ハイブリッドレジンを使用したCAD/CAMインレーの製作において,インレー体の厚みの違いによる,適合性への影響と変形の要因について検討することである.
窩洞形態は,下顎左側第一大臼歯II級MO窩洞で,咬合面部の厚みを1.0 mm,1.5 mm,2.0 mmの3種類としたインレー体を,ハイブリッドレジンブロックを用いて製作した.計測方法は,試験片製作時のCADデータとインレー体装着後のスキャンデータの外形部の差異を計測し,その差異を浮き上がり量とした.計測点は,インレー体咬合面縁端部(A),中心部(B),咬合面と隣接面の移行部(C)の3点とした.
その結果,計測点Cでは1.0 mmは2.0 mmと比較して浮き上がり量が大きな値を示し,有意差が認められた(P<0.05).計測点CはAと比較して大きな値を示し,有意差が認められた(P<0.05).
インレー体の浮き上がりが生じる要因は,インレー体の厚みが薄い場合やサポートピンによる支持が得られないことによるたわみが考えられる.また,インレー体を模型に挿入する際の方向や,ミリングバーの長期間使用による消耗,インレー体内面部の窩洞線角相当部の削り残しによる干渉が適合性に影響すると推察できる.
これらの結果から以下の結論を得た.
1 .インレー体咬合面と隣接面の移行部では,インレー体の厚み1.0 mmは2.0 mmより浮き上がり量が大きくなった.
2 .インレー体咬合面と隣接面の移行部は,咬合面縁端部より浮き上がり量が大きくなった.