看護理工学会誌
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原著
70歳以上高齢者における腋窩電子体温計のアラーム検知の比較: ブザーアラーム,振動アラーム,ブザー/振動アラーム
小谷野 結衣子仲上 豪二朗真田 弘美
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キーワード: 加齢, 認知機能低下, 難聴
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2023 年 10 巻 p. 168-178

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抄録
 目的は70 歳以上の高齢者を対象に腋窩体温計2種に備わった4つのアラームの検知結果を比較することである.デザインはランダム化クロスオーバー試験で全参加者が4アラームで体温を測定した(高音域ブザーAはリファレンス,音量大で低音域ブザーB1,振動B2,振動とブザーB3).参加者がアラームを検知した秒数からアラームが鳴った秒数を差し引き,アラーム検知可を5秒未満と定義した.参加者47 名の平均年齢は79.7 歳,アラームを検知できた人数(%)はAが19 人(40.4),B1 が31 人(65.9),B2 が46 人(97.8),B3 は46 人(97.8)であった.アラームタイプと年齢がアラームの検知に有意に関連しており,ミニメンタルステート検査に関連はなかった.各オッズ比はB1 が4.98,B2 が688.92,B3 が688.92,年齢が0.81 であった.振動は認知機能低下にかかわらず70 歳以上のアラームの検知に重要であることが分かった.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?

・高齢者にとって腋窩体温計のブザーアラームのように高音域の電子機器音は聞き取りづらい.
・ブザーアラーム聞き取り調査を実施すると(対象者107 人の平均年齢:70.9 歳),対象者58 人(54.2%)がアラームを聞き取れていなかった.
・今回は70 歳以上の高齢者を対象に,振動・低音域ブザーといった新しいアラームを有する腋窩体温計を用いて,どのアラームが最も聞き取れるか評価した.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 70 歳以上の高齢者は振動アラーム付き腋窩体温計を使用すれば振動を検知できるため,病院または自宅でサポートがなくても正確に体温管理ができる可能性がある.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→非接触型体温計は数秒で体温測定ができるためコロナ禍で市場が拡大した.腋窩体温計(測定に30~35 秒を要する)の汎用性を維持するためには,測定時間の短縮化が課題である.
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