抄録
高齢者のおもな死因の1つである誤嚥性肺炎は,感染初期は肺炎症状が乏しいため,早期発見がむずかしい疾患である.われわれは,誤嚥性肺炎の発症兆候を口腔内の試料から客観的に検知する手法の開発を目指している.その第一段階として,本研究では頬粘膜から唾液タンパク質を採取するための条件(採取に用いる物品の種類,擦過方法ならびに回数,保湿剤使用の影響)を検討した.その結果,口腔ケア用スポンジブラシを用いて頬粘膜部の奥から前方向へ10回擦過する方法が最適であると考えられた.保湿剤は,サンプル採取後の使用が好ましいことが示された.つぎに,本手法の有用性を検証するため,サンプルをLC-MS/MS に供した.その結果,データベース上に登録されている唾液タンパク質の半数以上が検出され,唾液中に多く存在するα-amylase やIgA などが含まれたことから,本手法により唾液タンパク質を解析することが可能であることが確認できた.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→ 誤嚥性肺炎を早期にかつ非侵襲的に検出できるマーカーを口腔内から探索するための第一段階として,口腔サンプルを採取する方法について解析しました.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 本研究から導き出された手法を用いて口腔サンプルを採取し,誤嚥性肺炎発症マーカーを見つけ出すことで,早期発見が可能になることが期待されます.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→ 看護・介護の場での使用のためには,誤嚥性肺炎発症マーカーを検出するPOCT機器などを開発する必要があります.