抄録
われわれは急性期病院において精神的な症状をもつ高齢者とロボットを会話させる試みを行ってきた.1つには,PepperとRoBoHoNというヒューマノイド型のロボットを病棟に常時配置し内蔵のソフトウエアで稼働させる試みを行い,病棟看護師の観察により患者が明るい表情を示す様子を確認できた.2つにはランダムにフレーズを繰り返し発話させるものや,家族のことや子供の頃など特定のトピックについて会話するソフトを開発し会話させた.ソフト開発を通じて高齢者への会話導入には腕を振るなどの注意を引く動作の重要性を確認した.加えて,繰り返しの発話を聞くことでリハビリに積極的になる症例を経験し,会話をすることで1名をのぞく10名の方では喜ばれ,自発的な発話が増える症例も見られた.これらから,ロボットの会話により急性期病院の高齢者において精神的な症状の緩和だけでなく,活動への参加意欲や社会性の向上などの効果も見られる可能性があると考えられる.