抄録
本研究の目的は,末梢静脈可視化装置の操作性能と可視化性能を,近赤外光の反射光を使用したPCタブレットモニターディスプレイタイプの試作機で評価することである.試作機の操作性能は,看護師が試作機を用いた模擬的な静脈穿刺の実施後に行った半構造化面接の内容を分析し,評価した.静脈可視化性能は,目視困難な静脈28本に試作機を用い,タブレットモニターの静脈画像で主観的に静脈目視の可否を判断した.試作機の操作性能は,モニターの静脈画像を観察しながら,実際の前腕部で穿刺部位を選択するのに時間がかかる【穿刺部位の選択】が問題だった.目視困難静脈28本を試作機で撮影した静脈画像のうち,可視化静脈は12本で可視化率は42.9%だった.非可視化静脈の平均深度は3.8mm(±1.6mm),可視化静脈は2.5mm(±0.9mm)で,非可視化静脈のほうが深く(p<0.001),そのカットオフ値は3.0mm-3.3mmだった(AUC=0.987,p=0.040).試作機は,深度3.0mm以上の静脈を可視化する改善が必要である.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→ 近赤外光による末梢静脈を可視化する既存機器はあるが,臨床で使用する操作性能は不足していること.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 現在の静脈穿刺技術を妨げず,ベッドサイドで容易に使える装置と静脈画像の画質の進展に貢献できる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→機器の操作性には穿刺部位を選択する静脈画像の画質を向上させる技術が必要である.