2015 年 22 巻 2 号 p. 37-52
高レベル放射性廃棄物の地層処分では,地層処分システムの長期安全性を評価する上で,累積的・広域的な変化を引き起こす現象について考慮する必要がある.この現象の1つとして,地震に伴う地下水圧の変化が挙げられる.原子力機構が岐阜県東濃地域で実施する地下水圧の長期モニタリングでは,これまでに地震に伴う地下水圧の変化が観測されている.本稿では,地震に伴う地下水圧の変化に関する観測結果を整理すると共に,大局的な地下水流動特性に与える影響について考察を行った.その結果,地下水圧の変化が観測された地震のうち2003年十勝沖地震,2004年の紀伊半島沖の地震,2009年の駿河湾の地震に伴う地下水流動特性の変化は一時的なものであると推測された.一方で,2011年東北地方太平洋沖地震以降の地下水圧の変化については異なる傾向を示している可能性があり,今後も観測を継続する必要がある.また,地震に伴う地下水流動特性の変化を評価する上では,地下水圧の変化のみならず透水係数や動水勾配の変化にも着目することが重要であることを示した.