原子力バックエンド研究
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研究論文
酸性リン酸化合物を共重合した感温性高分子ゲルによるアメリシウム(III)の抽出
竹下 健二中野 義夫松村 達郎
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2001 年 7 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

  感温性高分子ゲルを用いた新規なゲル/液抽出法を提案した.感温性ゲルは体積相転移現象を起こし,温度によってゲルの高分子ネットワーク構造が変化する.N-isopropylacrylamide(NIPA)に2-methacryloyloxyethylacidphosphale(MR)を共重合した感温性ゲルを合成し,硝酸塩水溶液中のAm(III)抽出を行い,Am(III)抽出平衡及び抽出速度に対する高分子ネットワークの構造変化の影響を調べた.
  ゲル/液間のAm(III)の分配比はLCST(下限臨界共溶温度;34°C)以上で大きな値を示し,温度低下に伴う収縮から膨潤へのゲルの体積相転移によって低下した.3°C~40°C聞の温度スイング試験を行ったところ,水溶液中のAm(III)の抽出と抽出されたAm(III)の放出を安定して繰り返すことができた.Am(III)の抽出機構は共重合されたMR(R-OH)に対して
                                        Am3+ +3R-OH= (R-O)3Am+3H+
と記述され,収縮状態(40°C)の摘出定数は膨潤状態(3°C)の3倍以上の値を示した.Am(III)の代替物質としてEu(III)を用いて, Eu(III)のゲル相内拡散係数を求めた.Eu(III)の拡散係数は40°C,3°Cいずれも10-12m2/sのオーダーであり,実用的な抽出クロマト樹脂の値と同等であった.また,10°C/minの速い温度変化に対しでもEu(III)抽出容量はよい温度追従性を示した.これらの結果は感温性ゲルの高分子ネットワークの構造変化によってAm(III)抽出及び放出が制御できることを示唆している.

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© 2001 一般社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
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