有機水田における雑草対策では様々な方法が試行されており,その一つに除草機の利用がある.除草機には様々な機構のものが存在するが,一般に株間の除草精度に課題を有するものが多い.そこで条間だけでなく株間の除草精度を向上させるために,ツース(除草爪)を往復振動させる機構を開発し,歩行型動力除草機として製品化した.本機の除草性能を長野県松本市のキカシグサやアゼナなどの広葉雑草が優占する黒ボク土水田で検証したところ,2-3回の除草作業実施により,雑草放任区(平均12439本m-2)の16-4%にまで残存雑草発生本数を低減でき,収量は完全除草区と同等以上であった.また,イヌホタルイ,コナギ,クログワイが発生する状況では,2回代かき・4葉以上の苗(不完全葉を除く)の遅植え(6月上旬)を組み合わせることで十分な除草効果を得られることが確認できた.1回の除草作業時間が約1時間/10aであることから,理論上の耕作可能面積は3.6-4.2haとなるため,有機水稲農家の作付け規模で多い10-300aの面積をカバーできる水田除草機として有望であると考えられた.