有機農業研究
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【技術論文】
北関東の有機栽培における水田輪作の活用:栃木県における事例
長谷川 浩
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2015 年 7 巻 1 号 p. 4-8

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抄録

水田輪作は水田雑草を抑制し,地力を活用して低投入でイネ・オオムギ・コムギ・ダイズを生産する方法として知られているが,有機栽培における科学的知見は限られている.2009年から10年にかけて,有機栽培のイネ-オオムギ/コムギ-ダイズの2年3作を実践する栃木県の関東ローム層の輪作水田を,連作水田と比較した.2009年には輪作水田のイネ精玄米収量586g/m2,オオムギ収量(聞き取り)300g/m2,コムギ収量320g/m2,ダイズ整粒重146g/m2であった.2010年には輪作水田では,イネ精玄米収量560g/m2,オオムギ収量234g/m2,コムギ収量249g/m2,大豆整粒重170g/m2であった.これに対して,連作水田の精玄米収量は2009年には348g/m2,2010年には320g/m2にすぎなかった.投入資材はイネ1作に米ぬか60g/m2とオオムギ/コムギ作付前の発酵米ぬか90g/m2だけであった.輪作水田の水田雑草は数および乾物重のいずれにおいても連作水田より少なかった.以上から,北関東の関東ローム層におけるイネ-オオムギ/コムギ-ダイズの2年3作の水田輪作は雑草抑制的で,低投入(150g/m2)で2年間に約1,000g/m2の収穫が可能であることが示唆された.さらに,作付履歴と土壌化学性の関係を調べたところ,ダイズ作回数が高いほど麦作回数と土地利用率も高く,低投入有機栽培の水田輪作によって地力窒素が低下する傾向は認められなかった.

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© 2015 日本有機農業学会
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