日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
南米の縦笛ケーナquenaによる接触皮膚炎症候群
野村 祐輝上津 直子
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2024 年 41 巻 4 号 p. 589-593

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抄録
 61歳,女性.8月中旬に両手指の強い痒みと痛みを伴う水疱・紅斑と下口唇のびらん及び両頬部の紅色丘疹が出現した.別の皮膚科医院でヘルペスウイルス感染症の診断で加療されたが軽快しなかった.4日後に当科を受診した際,下口唇と両手指DIP関節より末梢の手掌側にびらんがあり,顔面と前腕には多形紅斑様皮疹が多発し,一部癒合していた.詳しく問診したところ,症状が発現する13日前よりアンデス民族楽器の縦笛であるケーナ教室に通い始め,ケーナ接触部に症状が強かったことから,ケーナによる接触皮膚炎症候群や光接触皮膚炎の可能性を考えた.プレドニゾロン 20 mg/day内服を開始し,以後漸減して皮疹は軽快した.使用していたケーナ本体を削ったものと,患者がケーナの材料と申告していたジャカランダ(Jacaranda)原木を,それぞれ10%(w/v)で精製水あるいはエタノールに24時間浸しパッチテストの原液とし,さらに10倍,100倍,1000倍希釈液を作成して,パッチテストとフォトパッチテストを行った.ケーナの精製水抽出原液(++),10倍と100倍希釈(+),ケーナのエタノール抽出原液と10倍希釈(++),100倍希釈(+),ジャカランダのエタノール抽出原液(+?)であった.フォトパッチテストも同様の結果であり,ケーナによる接触皮膚炎症候群と診断した.更に成分分析の結果,患者の使用していたケーナは,患者が当初原木と申告していたジャカランダではなく,ダルベルギオン系物質が含まれるMachaerium属という木材が材料であることが判明した.本邦ではケーナによる接触皮膚炎が1例のみ報告されているが,ケーナ愛好者間では接触皮膚炎を起こしやすいことはよく知られており,接触皮膚炎リスクが高い材料であることを認識する必要がある.
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