日本臨床生理学会雑誌
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Print ISSN : 0286-7052
総説
非弁膜症性心房細動では赤血球の変形能が低下する
丸山 徹
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キーワード: 心房細動, 赤血球, 変形能
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 49 巻 2 号 p. 65-73

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抄録

赤血球は自身の直径より小さい毛細血管を通過するために外力により受動的に変形する必要がある.このため赤血球は両凹型の円盤状で表面積容積比を大きくしてガス交換と変形を容易にしている.この赤血球の変形能はしなやかさの指標であるが物理量としての定義はない.しかしこの赤血球の基本的で包括的な生理機能はさまざまな全身疾患や循環器疾患で低下することが知られている.赤血球の変形能は微小循環の規定因子であることから,変形能を詳細に検討することはそれらの疾患によるさまざまな臓器障害を予防して生命予後を改善する上で重要であり,また将来的には赤血球の変形能を治療標的とするような創薬の可能性も考えられる.赤血球の変形能は高血圧や糖尿病などの冠動脈疾患の危険因子やメタボリック症候群の構成因子ならびに心房細動との間に密接な関係がある.また心房細動における左房内血栓の形成にも左房内の血流うっ滞,血液濃縮と凝固活性の亢進,心内膜の抗血栓性の低下というVirchowの三徴が成り立つ.しかし心房細動の最大の合併症である心原性脳塞栓症と赤血球変形能の低下との関連性については今後のさらなる検討が必要である.

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© 2019 日本臨床生理学会
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