2022 年 52 巻 5 号 p. 161-170
背景:職種の違いが糖尿病の発症に影響を及ぼしているかに関しては,十分に解明されていない.
対象と方法: 2010 年度の定期健康診断にて無治療でHbA1c 値が6.5%未満であり,2015 年度および2020 年度のHbA1c 値が確認できた東武鉄道社員3225 名を後ろ向きコホートとして以下の検討を行った.2020 年度のHbA1c 値により①糖尿病型疑い群(DM 群)(HbA1c ≧ 6.5: n = 53),②境界型疑い群(BL 群)( 6.0 ≦ HbA1c < 6.5: n = 132),③正常型維持群(NK 群)(HbA1c < 6.0: n = 3040)の3 群に分け,HbA1c,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,尿酸,LDL-C,eGFR に関して,それぞれ2010 年度,2015 年度,2020 年度の値を職種別に比較した.また肥満(BMI ≧ 25),高血圧(収縮期血圧≧ 140 または拡張期血圧≧ 90),高尿酸(尿酸値≧ 8.0),高脂質(LDL-C ≧ 160),腎機能低下(eGFR < 60)および軽度HbA1c 高値(≧ 5.5)に関して,2020 年度の糖尿病型疑い発症(HbA1c ≧ 6.5)に対する2010 年度および2015 年度のオッズ比をロジスティック回帰分析にて求めた.
結果:(1)2020 年度の糖尿病型疑い発症数(率)は乗務員(T) 22 名(1.5%),駅務員(S)18 名(2.4%),エンジニア(E) 7 名(2.3%),事務系社員(O) 6 名(0.9%)で,S およびE で Tおよび Oより発症率が高かった(p<0.01).(2) 2010 年度の HbA1c,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧,尿酸,LDL-C 値は,DM 群でNK 群に比してそれぞれ有意に高かったが,明らかな職種間の差はなかった.(3)2020 年度の糖尿病型疑い発症に対する2010 年度および2015 年度のリスク因子のオッズ比は,軽度HbA1c 高値(13.1, 16.4),肥満(7.23, 4.89)で有意に高く,それぞれ独立した危険因子と判断された.(4)軽度HbA1c 高値のオッズ比はいずれの職種でも2010 年度,2015 年度とも有意に高かったが,肥満に関しては2015 年度のE とO では有意でなく,高血圧に関してはS でのみ2010 年度,2015 年度とも有意,高尿酸に関しては2010 年度のT およびO で有意に高いという職種および時期による違いがあった.(5)高脂質ではオッズ比の高いものはなかった.
結論:糖尿病型疑い発症にはいずれの職種においても元々のHbA1c 軽度高値と肥満が強く関係していたが,高血圧,高尿酸など他のリスク因子の関与の仕方には職種による差があった.