産業医学
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Stressと尿係数 : 特に現代産業疲労研究法としての尿係数法(O/K3)について
西風 脩
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1959 年 1 巻 7-8 号 p. 639-649

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抄録

今日における産業疲労の研究は従来の筋肉生理学に立脚する疲労研究の限界を越え,それが人間への機械拘束よりする精神身体機構学的研究に移行しつつあることはいうまでもなく,したがつてその産業疲労あるいはその現象に関する説明にも,そこに精神肉体機構学的性質を見出さざるを得ない。 したがつて著者は今日,疲労あるいはその現象につきつぎの如く説明を加える。 それは"精神肉体学的疲労因子にその原因を有する人間の内部環境恒常維持における機能低下乃至はその荒廃,換言すれば疲労因子のその精神的,肉体的の如何を問わず,それより作用効果づけられた人間の内外環境に対する順応性の低下乃至はその荒廃を指示し,そこに"人間の健康より死亡に至る間の上記環境に対するすべての順応現象"が包括されるものとする。 かく疲労を定義した場合,今日における疲労測定の意義はまことに重太なものとなる。 D.R.Wilsonの言葉をかりまでもなく, 研究の目的がいかなるところにあろうと,それが産業疲労,臨床医学研究の如何を問わず,その人体観察の重要なる第一の段階はまずそれら各研究分野において人体に負荷され適用された作用因子,乃至は治療因子の効果を個体全体として把握すべきところにある。今日の疲労測定の意義はここに存する。かかる意味において,現在,臨床領域において人体に対する薬物あるいは補液判定に,手術効果判定に適用されている今日の尿素係数の紹介が,産業疲労研究分野において多少なりとも益するところあれば,著者の幸いするところである。

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© 社団法人 日本産業衛生学会
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