産業医学
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活性炭ディスクの加熱脱着を利用した環境ガスのガスクロマトグラフによる分析法
小西 淑人吉川 正博高田 勗北松 康和池浦 健能五十嵐 秀雄福士 卓郎松井 正夫
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1984 年 26 巻 6 号 p. 470-476

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抄録

作業環境中の有害ガスの個人モニターとしては活性炭ディスクに吸着させた環境ガスを二硫化炭素で抽出してガスクロマトグラフで定量する方法が提案されている.この方法は抽出液として二硫化炭素を用いるため,取扱い上および迅速性の面で問題があるので,われわれは,活性炭ディスクに吸着された成分を加熱脱着してガスクロマトグラフで直接的に定量する改良法を検討した結果,実用になりうることがわかったので報告する.
トルエン蒸気を用いた実験では,まず加熱脱着による分析の可能性を試験するために200 ppmのトルエン蒸気を用いて,特製パイレックスガラス容器(270 ml)中, 16時間活性炭ディスクと接触させてから,活性炭ディスクを細分し,各切片への吸着量を加熱脱着機能をもつガスクロマトグラフで定量した結果,活性炭ディスク中心部での値は,ほぼ満足すべきもので,この方法は改良法として用いうることがわかった.このため,試料蒸気と接触させた活性炭ディスクは16等分して,各切片に吸着された試料を分析することにし, 20, 40および80 ppmのトルエン蒸気に,それぞれ1週間曝した活性炭ディスクを用いて実験した.この結果から,実験値の平均値(W)とトルエン濃度(C)の間には直線関係があり, C=1.14×W(mg)と表現できることがわかった.ここでガスクロマトグラフのレコーダーでプリントアウトされる面積をAとするとW(mg)=5.024×10-6Aの関係となる.蒸気濃度と曝露時間の関係,および加熱脱着部の改良による活性炭ディスク試料の大型化はさらに検討する必要がある.
3M Brand Organic Vapor Monitorを用いる場合は,対象ガスが活性炭に吸着でも,さらに, CS2により変質せずに抽出できることが必要であるが,この条件に適合しない化合物として, CO, CH4, C2H6, C3H8, CH2-O-CH2, CH3OH, HCHO, CH3Cl, H2S, CH3NH2,(CH3)2-NH,(CH3)3N, RNCS,およびSO2などがある.本改良法により,この点を改善できるか否かをしらべるためにメタノール蒸気を試験した.蒸気濃度を20, 40および80 ppmとして,トルエン蒸気の場合と同様に検討した結果,メタノール蒸気濃度に関係なく活性炭ディスクを16等分してからガスクロマトグラフで分析するまでの時間が短いほどよいことがわかった.これは,吸着されたメタノール蒸気が揮発しやすいことに原因すると考えられるので,測定までの時間がもっとも短い試料のデータをもとにして整理した結果,メタノール蒸気濃度(C)と実験値の平均値(W)の間には, C=1.19×W(mg)の関係があることがわかった.ここでAをトルエン蒸気の実験の場合と同様にとると, W(mg)=1.74×10-9Aとなる.

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© 社団法人 日本産業衛生学会
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