産業医学
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水銀の生物学的モニタリングの媒体としての毛髪と爪の比較
鈴木 継美渡辺 学松尾 直仁
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1989 年 31 巻 4 号 p. 235-238

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抄録

毛髪と爪について,水銀の化学形による分別定量を行なった. 23歳から56歳までの男女それぞれ18人, 5人について,手の爪は3回,頭髪および足の爪はそれぞれ1回採取し,マゴス法の変法を用いて総水銀と無機水銀を測定した.
毛髪と爪の総水銀・無機水銀とも性差は見られなかった. 3つの形成時期の異なる手の爪の総水銀と無機水銀の値はいずれも同じ水準にあった.最も総水銀濃度の高かったのは頭髪で,次いで手の爪・足の爪の順であったが,無機水銀の場合には,頭髪と手の爪の水準がほぼ同じで,足の爪はそれより低い値を示した.また,総水銀に対する無機水銀の割合については手の爪が最も高い値を示し,これは手の爪が形成後の外部からの汚染が多いことを反映している可能性が考えられる.毛髪は爪よりも高い総水銀濃度であったが,これは毛髪と爪との間でその構成成分が異なることや,形成時の血液の供給の程度の差などが寄与していると考えられる.

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