1964 年 6 巻 11-12 号 p. 685-692
1. ベンゼン及びトルエンを使用している,ビニールのグラビア印刷事業所において,15名の従業員のうち,13名に異常所見を認めた。 2. 夏期(5月∼10月)はトルエンを,冬期(11月∼4月)は5%のベンゼンを混じたトルエンを使用している。昭和39年6月の調査に際しては,ベンゼンは検出されず,事業所内には150∼550ppmのトルエンが検出された。事業所の三階にある居室では,330ppmのトルエンが検出された。 3. 女子従業員4名のうち,3名は,溶剤中毒に起因すると考えられる再生不良性貧血に罹患していた。これらの患者は,日中は9時間以上,高濃度の溶剤蒸気に曝露されつつ作業し,夜間は,溶剤蒸気の充満している事業所の二階,三階に居住し,一日中,溶剤に曝露されていたのであった。