戦国時代でも敵方の情報を捕捉することが重要であったし,技術面でも奥義が大切にされた。現在は,公表された情報は非常に多くなっているが,あらゆる種類の情報が秩序なく供給されているので,その中から大切なものを選択する能力が大事になってきている。製造業では,高度成長期には物をつくれば売れたから生産技術情報が求められたが,低成長期に入ると,何をつくれば有望なのかという企画的,販売的な情報が要求されるようになっているのに,そうした情報は非常に少ない。つまり,求める情報と与える情報との間に格差がある。一方,情報は,問題意識を持って集め,それを解析してこそ,はじめて力を持ち,実のあるものになる。その反省すべき例として,パラジウムを利用したエチレンからのアセトアルデヒドの製法があげられる。情報は多いにこしたことはないが,情報を読むのは人間であり,その本質を読むことがまず大切であろう。